第2回☆ 悪ノ娘

昔々あるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨するは
齢十四の王女様
絢爛豪華な調度品
顔のよく似た召使
愛馬の名前はジョセフィーヌ
すべてがすべて彼女のもの
お金が足りなくなったなら
愚民どもからしぼりとれ
私に逆らうものたちは粛清してしまえ

「さあ、跪きなさい!」

悪の華 可憐に咲く
鮮やかな彩で
周りの哀れな雑草は
嗚呼 養分となり朽ちてゆく

暴君王女が恋するは
海の向こうの青い人
だけども 彼は隣国の
緑の女に一目ぼれ
嫉妬に狂った王女様
ある日大臣を呼び出して
静かな声で言いました
「緑の国を滅ぼしなさい」
幾多の家が焼き払われ
幾多の命が消えてゆく
苦しむ人々の嘆きは
王女には届かない

「あら、おやつの時間だわ」

悪の華 可憐に咲く
狂おしい 彩で
とても美しい華なのに
嗚呼 刺が多すぎて触れない


悪の王女を倒すべく
ついに人々は立ち上がる
烏合の彼らを率いるは
赤き鎧の女剣士
つもりにつもったその怒り
国全体を包み込んだ
長年の戦で疲れた
兵士たちなど敵ではない
ついに王宮は囲まれて
家臣たちも逃げ出した
可愛く可憐な王女様
ついに捕らえられた

「この、無礼者!」

悪の華 可憐に咲く
悲しげな彩で
彼女のための楽園は
嗚呼 もろくも儚く
崩れてく


昔々あるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨してた
齢十四の王女様
処刑の時間は午後三時
教会の鐘が鳴る時間
王女と呼ばれたその人は
一人牢屋で何を思う
ついにその時はやってきて
終わりを告げる鐘が鳴る
民衆などには目もくれず
彼女はこう言った

「あら、おやつのじかんだわ」

悪の華 可憐に散る
鮮やかな彩で
後の人々はこう語る
嗚呼 彼女は正に悪ノ娘